J-Workout(ジェイ・ワークアウト)株式会社[脊髄損傷(頚椎損傷、胸椎損傷、腰椎損傷)専門トレーニングジム]

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脊髄損傷とは?

脊髄損傷とは?

脊髄損傷 せきずいそんしょう、英語:Spinal Cord Injury

脊髄損傷は、主に脊柱に強い外力が加えられることにより、脊髄に損傷をうけた病態のことをいいます。脊髄の損傷は外傷によるものが多く、椎骨の骨折や脱臼により起こります。また、このような外的要因だけでなく、疾病などによる脊髄腫瘍やヘルニアなど内的要因によっても類似の障害が発生することがあります。後天的に発生する場合が多く、外傷のほか、脊髄の炎症・脊髄や脊柱の腫瘍・血管の異常などが原因です。先天的な場合は二分脊髄や、脊髄空洞症などが原因となることがあります。神経学の権威でノーベル医学賞受賞者であったサンティアゴ・ラモン・カハールが1928年に「成熟した神経回路は固定されていて変更不能であり、あらゆるものは死にゆくことはあっても再生することはない」と主張したことにより、長い間、脊髄を含む中枢神経系は一度損傷すると修復・再生されることは無いと考えられていましたが、現在では中枢神経の回復が成熟した神経回路でも起こると証明されています。
(「再生医療」の項にて詳細を記載)

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一般的な症状

脊髄の損傷部位・程度によって「完全損傷」と「不完全損傷」に分類されます。「完全損傷」は脊髄が横断的に離断され、神経伝達機能が完全に絶たれた状態であり、損傷部位以下の機能が完全に麻痺してしまいます。また、仙髄機能が温存されておらず肛門周囲の知覚や肛門括約筋の収縮が見られない状態です。「不完全損傷」の場合は脊髄の一部が損傷、圧迫などを受け、一部機能が残存するものを指します。そして、仙髄機能が温存されている状態で、その指標として肛門周囲の知覚の残存、肛門括約筋の随意性の収縮のどちらか1つでも認められている状態をいいます。
(ASIA:アメリカ脊髄損傷協会 神経学的分類に基づく)
完全損傷の場合、損傷部位以下は上位中枢からの支配を失い、脳からの運動命令は届かず運動機能が失われます。また、上位中枢へ感覚情報を送ることもできなくなるため、感覚知覚機能も失われます。つまり損傷してしまった脊髄の支配レベル以下は「動かない、感じない」という状態に陥るということです。

ただしJ-Workoutでトレーニングを行っていく上で、仙髄の感覚・運動機能が戻ってきた場合は「完全損傷」損傷から「不完全損傷」と判断されます。

完全損傷と言っても、全く何も感じないわけではなく、受傷部位以下に疼痛が残ることが多くみられます。また、痺れなどの異常知覚、麻痺部で本来感じないはずの痛みを感じることもあります。トレーニングによって一時的にこの痺れや痛みの増強がおこることがありますが、これらは麻痺部からの求心性情報を受け取っているという可能性を示しています。J-Workoutでは独自の方法を使用し、これらの症状をさらに強く長くするよう導き、脊髄神経の回復段階の一部として有効活用します。

また、別の症状としては、上位頸髄損傷の場合、感覚、運動だけではなく自律神経系も同時に損なわれています。そのため、汗をかく、鳥肌を立てる、血管を収縮/拡張させるといった自律神経系の調節も機能しない、あるいは低下し、体温調節、血圧のコントロールが困難となります。その為、起立時の低血圧を引き起こしやすくなり(起立性低血圧)重症な場合、車椅子上の座位状態でも低血圧を起こす事があります。また、麻痺部においては代謝や血流が低下しているため、外傷などは治りにくい傾向にあります。

かつては脊髄損傷患者の寿命は健常者に対し、大幅に短いものでしたが、現在では医療技術の発展に伴い、およそ5%程度短いだけの平均寿命となっています。つまり、その分だけ脊髄損傷患者の生活を改善する必要性が増していることになります。J-Workoutで定期的に全身運動を行っているクライアントの方は、2次的な健康被害に悩まれている方が少ない傾向にあります。代表的な疾患としては、肺炎です。脊損患者の方に肺炎が多い原因は、十分に肋間筋等を使えず、呼吸機能が十分でないということにあります。呼吸というのは横隔膜で肺を拡げて、それで肋間筋や腹筋等でぐっと肺を縮めて空気を出すわけです。胸部脊髄の上の損傷の方、あるいは頸髄損傷の方というのは、肋間筋等が十分に駆使できませんので、強い咳が出せないとか、喀痰が出しにくい状態になります。このために、菌が入りやすい、抜けにくいという状況になって肺炎になりやすく重症化・反復化しやすくなります。また、肺活量が低下していることが肺炎の重症化につながっています。それから、脊髄損傷者は運動習慣が低下しているための免疫力低下の問題も挙げられます。運動習慣を持っていますと、免疫力が上がるというデータがあります。

脊損の方の耐糖能障害は健常者の2倍です。ですから、2倍の耐糖能障害を持つということは、心筋梗塞とか狭心症になる可能性も2倍と考えなければならないということです。脊損の方の耐糖能障害が多いわけは、運動習慣が少ないこと、またそのような施設がないこと・あったとしても実際に運動できる人は一部の人に限られていることにあります。もちろん、車いすの競技もありますが、実際には、なかなかできにくいのが現実です。また、運動時には、おもに上肢の筋肉を使い、足の筋肉は使いませんから、使用運動筋肉量が少なくなってしまいます。そのため、筋肉組織自体がインスリンに反応しなくなり、それがインスリン抵抗性をあげているという悪循環になり、それらの結果、脊損の方には耐糖能障害が多いということになるのだと考えられます。
J-Workoutでは麻痺部を含めた全身運動をおこない、なるべく上半身に頼らないよう指導していきます。定期的に下肢・上肢の筋周囲の測定を行いますが、実際に上肢・下肢の両方に筋肥大がみられます。

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損傷部位と機能障害

ヒトの脊柱は頸椎 Cervical vertebrae (1−7椎) 、胸椎 Thoracic vertebrae (1−12椎) 、腰椎 Lumbar vertebrae (1−5椎) 、仙椎 Sacrum (1-5椎) 、尾椎 Coccyx(馬尾神経) に分けられます。損傷箇所が上に行くほど、障害レベルは高くなり、制限を受ける動作が多くなります。
障害の度合いを説明する際は、それぞれの英語表記の頭文字を取って「C5の完全麻痺」「Th12の不完全麻痺」と表現することで、障害レベルをある程度他者に伝えることが可能となります。「C5の完全麻痺」の場合、C5までの機能は残っているが、C6の以降の機能障害を受けていることを示しています。

2002年の調査によると、脊髄の損傷部位は頸髄が最も多く、特に頸髄損傷はC6あたりの頻度が多く見られます。C6を損傷するということは、C5が麻痺していないため上腕二頭筋は収縮ができますが、C7より上位の損傷の場合は、C7の支配が上腕三頭筋のため、麻痺により上腕三頭筋が収縮できず肘を自力で伸ばすことが困難となります。C6は自立生活を送れるかどうか、C7はトランスファーができるかどうかの境界線になる可能性が高いということです。肘の伸展が可能かどうかで生活の質は大きく変わります。
完全損傷の場合、仙髄以下では排泄、勃起などの機能に支障をきたし、更に、下部胸髄から腰髄では両下肢が麻痺します。上部胸髄では腹筋・背筋が機能を失うため、体幹の保持も困難となります。さらに頸髄を高い位置で損傷すると上肢だけでなく呼吸筋まで麻痺し、人工呼吸器なしには生きられなくなってしまいます。しかし、実際の損傷部位と、残存機能は異なることがあります。
現在、J-Workoutでは自発呼吸のできる方のみトレーニングの指導を行なっております。

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受傷原因

現在日本には10万人以上の脊損者がおり、毎年5000人以上があらたに脊髄損傷を負っています。
1990 - 1992年の調査によると、受傷原因の割合は以下の通りです。
交通事故 (43.7%)
高所からの落下 (28.9%)
転倒 (12.9%)
打撲・下敷き (5.5%)
スポーツ (5.4%)
その他 (3.6%)
この時点の調査によると、男性は女性の約4倍を占めており、受傷時年齢は50歳代と20歳代にピークが見られます。2002年に行った同様の調査によると、今現在でも男性と女性の比率は4:1で、受傷年齢も同様に50歳と20歳にピークのある二相性のパターンが見られます。ただし、2002年の50歳以降の受傷例の割合は1990−1992年より増加しています。受傷原因の交通事故は減少傾向にあるものの、歩行中の転倒による受傷が12.9%から19.0%に増えています。近年は高齢化に伴って歩行中の転倒、頸椎ヘルニアや脊髄狭窄症などあらたな受傷原因となるものも出てきております。高齢脊髄損傷の増加には二つの側面があり、ひとつは高齢になって脊髄損傷に受傷する方の増加傾向であり、もうひとつは脊髄損傷者が高齢化する問題です。今後、高齢者の転倒・転落予防対策、また脊髄損傷後の健康維持対策が大切になるでしょう。

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脊髄を損傷すると

事故現場、スポーツ現場において救急救命の際、脊椎の屈曲,伸展により,脊髄の挫傷や離断が生じる可能性があります。したがって,受傷者を動かす際の取り扱いが不適切であると,脊髄を損傷させて片麻痺,四肢麻痺,さらには死をもたらす可能性があります。そのため、気道,呼吸,循環を安定させた後は,脊椎や脊髄への二次損傷の防止に目標を置きます。脊髄損傷の可能性のある患者は,身体を一体的に動かすようにし,固くて平らな背板または同様の表面の物の上に乗せ,過度の圧迫を与えずに体位を安定させる当て物をして搬送する。
頸髄損傷の場合は首を動かすとさらに障害を広げることになります。そういった意味で、多発外傷や鎖骨より上部の損傷がある場合は頸髄損傷があるものと考え頸部を中間位で固定するために,固いネックカラーを装着します。特に、呼吸困難を誘発する可能性のある頸髄損傷患者は,背臥位にして運び,気道を確保し,胸部を圧迫しないように注意しなければなりません。胸髄または腰髄損傷患者は,腹臥位または背臥位にして外傷センターに運びます。

脊髄損傷が起きると神経原性ショックが起こり、血圧が下がり徐脈傾向となります。これは主に上位胸椎より高位の脊髄損傷によるショックで,自律神経系失調によって引きおこされた末梢血管弛緩による血圧低下です。低酸素および低血圧はいずれも,損傷した脊髄にさらなるストレスを与えうるため,治療はこれらの回避に向けられます。一例として、脊髄損傷後8時間以内にはコルチコステロイド大量投与は開始されます。腫脹と局所的な痛みが引くまで,損傷は外科手術を施行するかしないかに関わらず,安静,鎮痛薬,筋弛緩薬で治療します。

受傷後、脊髄の機能が失われ脊髄ショックと呼ばれる状態になります。(受傷後数時間から48時間、ときに数週間)これは損傷部位以下の感覚や知覚の脱失、運動障害、膀胱直腸障害などのような身体の基本的な機能が失われる時期の事をさします。しかし、この時点では真の障害像を示しているわけではなく、患者が将来完全麻痺となるかは全く予測ができません。脊髄ショックから離脱した時点で不完全麻痺であったら回復する可能性があります。脊髄ショックは基本的には24時間から48時間以内に離脱すると言われていますが損傷部位や症状によって差が大きいです。48時間経過して完全麻痺であっても、それは永続的な麻痺となるとは限りません。脊髄浮腫の程度と期間によっても左右されます。脊髄ショックから離脱したかどうか判定するには球海綿体反射を用いることが多いです。指を肛門にいれて亀頭または陰核を圧迫すると肛門が絞まります。これを球海綿体反射陽性といい、ショックから離脱したという所見です。
時間が経過して脊髄ショック期を過ぎると、今度は動かせないはずの筋肉が本人の意思とは関係なく収縮したり、痙攣を起こすことがあります。これを痙性または痙縮と呼びます。
一般的には不必要で邪魔なものと考えられていますが、J-Workoutでは痙性も利用し随意運動・歩行運動へと導いていきます。痙性が強すぎてコントロールができない場合は、上手くコントロールしていく方法を習得してもらいます。痙性がとても弱い状態のクライアントには痙性を増やすトレーニングを施行します。痙性が起こる事で、一定の筋肉量が保たれ骨密度の低下を抑える事ができるようになる為です。痙性の有無に関わらず外的刺激が加わるエクササイズを取り入れてトレーニングを積極的におこないます。

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一般的なリハビリテーション

受傷後、急性期を過ぎたらなるべく早くリハビリテーションを行うことが理想です。長く寝ていればいるほど筋肉が落ち、循環機能は低下し、復帰までの時間がかかるようになるからです。リハビリテーションは,理学療法,技術訓練活動,および社会的,情緒的ニーズに応えるためのカウンセリングを組み合わせたチームアプローチとして提供されます。集中治療(ICU)から一般病棟に移ったら、時期を見て少しずつベッドのリクライニング角度を上げていきます(ギャッジアップ)。長時間仰臥していたことにより、血圧が低下しており、急に体を起こすと特に頸髄損傷者においては自律神経が機能しないため脳貧血を起こします。次にベッド上でのリクライニングに慣れてくると車椅子に移る訓練になります。車椅子上で脳貧血を起こさないようになれば、看護師、ソーシャルワーカー、栄養士、心理士、理学療法士、作業療法士、レクリエーション療法士、職業カウンセラーなどによる様々なリハビリテーションを開始します。

理学療法は、筋肉の強化、および装具、歩行器、車椅子など、活動性を改善するために必要となる補助器具の適切な使用の訓練に焦点を当てます。痙性、自律神経異常反射、神経原性疼痛をコントロールする方法が教示される。作業療法は、微細運動能力の再発達に焦点を当てます。膀胱および腸の管理プログラムでは、排尿、排便の技術が指導され、これには間欠的カテーテル法が使用されることがあります。

職業リハビリテーションには、微細および粗大運動能力の両方、ならびに認知能力の評価が含まれ、雇用に就ける可能性あるかどうかが判断されます。次に職業教育の専門家が、可能な職場を特定し、補助器具や実際に働く場所の改修の必要性を判断します。レクリエーション療法士は参加が可能な趣味、運動、その他の活動を特定し参加を促します。

心のケアは、体を制御できなくなった後に生じる離人症や、うつ状態を克服させることを目的とします。心のケアは、他のリハビリテーション構成要素を成功させる上で基本となる要素ですので、それには患者を教育し家族や友人の積極的な関わりを促すための努力が必要になります。

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一般的なリハビリとJ-Workoutの違い

上記で紹介したような、日本の一般的な病院で行われている脊髄損傷のリハビリテーションとは失われた機能を回復させることではありません。「一度脊髄を損傷すると機能を回復することはほぼ不可能」というこれまでの定説から、歩行を目指すためのリハビリテーションはほとんど行われていません。病院のリハビリの目的は、「残された機能をいかにして使い、ADL(日常生活動作)を可能にするか」という点に焦点が絞られています。残存機能を今までの120%にも150%にも使い、必要な筋力を強化し、車椅子の操作などに習熟することなど、新しい状況に慣れていく過程が、日本の脊髄損傷におけるリハビリテーションです。

J-workoutが既存のリハビリ施設と大きく異なるのは、「動かすことのできない部分」の機能回復も目指している点です。近年、修復が不可能とされてきた中枢神経組織の理論が、中枢神経の可逆性、修復、再生等の立証によって変わりつつあります。これらは全て、損傷部位の上下におりて、適切なレベルの神経運動を根気よく続けたことに関係性があります。今ではリハビリを実行することによって、神経組織の機能的回復を期待することができるようになりました。問題は、そのようなリハビリは長期に渡って実施すること不可欠であることです。現在日本ではそのような神経運動を長期で行うことが可能な医療機関がないということや、医療保険の適応期間か限られていることが機能的回復の可能性を阻んでいます。例え、長期にわたる運動が神経組織の機能的回復に繋がることが立証されていても、残念ながらそれを実施する場所が今の日本には存在しません。

J-Workoutは日本で唯一の慢性期の脊髄損傷者のトレーニングを長期間に渡って行なうことが可能な施設です。J-Workoutの独自の方法を用いて、クライアントの方の神経組織に働きかけ再組織化を図り、残された脊髄神経に歩行機能を再教育するのです。

出来る限り早い段階でトレーニングを開始した方が回復は早いと言われています。ただ、たとえ受傷後のトレーニングの開始時期が遅かったとしても、あきらめることはありません。実際、J-Workoutに来ている方は急性期・慢性期のリハビリテーションを病院で終え、慢性期に突入しているかたばかりです。その有効性は、科学的にも実証済みで、受傷一ヶ月程度の「急性期」の方だけでなく、受傷2ヶ月〜20年の「慢性期」の方の機能回復を果たしたとして、科学誌「NATURE」にも掲載されました。

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合併症

脊髄損傷による麻痺以外に、様々な別の身体的リスクが発生します。その中でも「二大合併症」といわれるのが【褥創】と【尿路感染症】である。

【褥創】

褥創(じょくそう)はよく「床ずれ」と言い換えられることがありますが、実際にはそのような生易しいものではなく、血流障害による皮膚の壊死のことです。
通常であれば、長時間同じ姿勢で座っていたり横になっていると、接地面の血流が不足し、痺れや鈍痛を感じ、無意識的に座位を変えたり寝返りを打ったりしているものです。ところが脊髄損傷によって感覚を失っているとそれが知覚できず、圧迫され続けた部位が血行不良により酸素と栄養分不足となり組織を冒してしまいます。筋肉を動かさないことによって筋肉の廃用性萎縮がおこり、露出してしまった骨が薄い皮膚を圧迫することもこれを助長します。最も多い褥創の部位は仙骨部(約50%)踵骨部(15%)尾骨部(10%)で、他にも、坐骨部、大転子部、また、下肢だけでなく、上肢(肩峰部、肋骨部など)にも見られます。
最初は皮膚が赤らむ程度から始まりますが、最も重篤な場合には真皮を突き抜けて脂肪層までえぐられるように壊死を起こすこともあります。脊髄損傷者は皮膚再生能力も落ちている為、こうなると数ヶ月に及び入院が必要となることも珍しくはありません。

褥創を段階的な「DESIGN(デザイン)」という項目で分類することができます。

D:Depth(深さ)
創内の一番深いところで判定し、真皮全層の損傷までを"d"
皮下組織を超えた損傷を"D"
E:Exudate(滲出液)
ドレッシング交換(創部を覆う保護材)の回数が1日1回以下を"e"
1日2回以上の交換の場合を"E"
S:Size(サイズ)
創部の長径(cm)×直交する長径(cm)=100未満を"s"、100以上を"S"
I:Inflammation(炎症/感染)
感染兆候のないものを" i "
感染兆候のあるものを" I "
G:Granulation tissue(肉芽組織)
良性肉芽の割合が50%以上を"g"
良性肉芽の割合が50%未満を"G"
(良性肉芽とは必ずしも病理組織学的所見とは限らず、鮮紅色を呈する肉芽を表現するものである。)
N:Necrotic tissue(壊死組織)
壊死組織なしを"n"
壊死組織ありを"N"
P:Pocket(ポケット)
ポケットが存在する場合にはDESIGNの後に"−P"と記述

●褥創の予防

−体位変換:
ベッド上では2時間ごとに体位変換を行なうことが基本とされる。
車椅子上では15分ごとのプッシュアップが理想とされる。
−栄養管理:
高タンパク質、高エネルギーのものがすすめられる。
−突出部の保護:
尾骨や、踵骨、各外内果(くるぶし等)の突出部にゲル、または粘弾性パッドを敷く。
直接保護材で覆うことで、摩擦や、圧迫による虚血を減少させる。
円座は周囲の皮膚が引っ張られ、接触部位が虚血状態になる為勧めれない。)
−血液循環を良くする:
局所の虚血を防ぐため、全身の血流を良くすることが勧められる。
離床、活動性を高めるよう心がける。

●褥創の治療

早期発見をし、専門医(皮膚科)の指導、処置を受けることをお勧めします。
−浅い褥創:
発赤の場合・水泡が破れていない場合はドレッシング材などによる保護。
(水泡は緊満の場合は、針で穴をあけ、内容物の排出をはかる。皮膚はむやみに剥がさない)
:表皮内のびらん、真皮までの潰瘍・水泡が破れている場合は、外用薬や、吸水性のあるドレッシング材を用いる。湿潤環境の維持、過度な滲出液を吸収し、創傷周囲の健常皮膚への侵軟を防止する効果がある。(肉芽形成促進、鎮痛、止血効果の報告もある)
−深い褥創:
基本的に、深い褥創は外科的デブリードマン(除去)の対象になることが多い。
個人で気をつけなければならないことは、局所を乾燥させないよう、滲出液が乏しい場合には、薬剤による保湿を心掛け、また、滲出液が多量な場合は、吸水性のあるドレッシング材を使用し、滲出液、細菌を吸収する事で、創面の洗浄効果で、壊死組織が除去される。(ガーゼのみの保護の場合、乾燥に繋がってしまうので、保護フィルムを併用すると良い。)

J-Workoutでは褥創が坐骨・仙骨・尾骨などにできてしまいますと、できるトレーニングが限定されてしまいます。 状態によってはトレーニング自体が行なえない場合もあり、長期間に治療が必要になるケースも少なくありません。 日ごろから褥創には十分に注意を払い、可能な範囲で予防を心がけ、早期発見、早期対処を行ない、小さな傷なども見逃さないようにしましょう。

【尿路感染症】

尿路感染症とは、腎臓、膀胱、尿道、前立腺、精巣、精巣上体などの尿の通り道に起きる感染症です。尿道から有害細菌が侵入することによって引き起こされる様々な障害のことです。原因菌としては大腸菌が最も多く、複雑性尿路感染では大腸菌の他、肺炎桿菌(はいえんかんきん)やブドウ球菌などの割合が多くなっていきます。
多くの脊損者は自力で排尿できない為、カテーテル等を使って導尿を行います。このとき、カテーテルを介して雑菌が尿道、膀胱に入り、炎症や敗血症の原因となるのです。また、オムツ内に長時間尿や、便を放置することで、細菌感染のリスクは高くなります。女性の場合は尿道口と肛門の距離が近く、尿道の長さも男性より短い為、リスクはより高くなります。排尿時には手指や器具の清潔を徹底しなければなりません。
症状は、常に尿意をもよおす、尿をするとき、したあとが痛い、下腹部の痛みと等の症状があります。しかし、脊髄損傷による麻痺で、これらの症状に気づけない事が多く、処置が遅れ、高熱、時には入院治療が必要になるケースは珍しくありません。早期治療を行なえるように、普段から、尿の状態を観察する習慣をつけ、尿の混濁、浮遊物、匂い、血尿などを確認しましょう。また、寒気、嘔気、嘔吐などの全身症状が現れることがありますので、これらの所見があった場合には速やかに医師の診察をうける必要があります。

尿路感染症がある場合、トレーニングを中止しなければなりませんので、しっかりとした自己管理が必要です。日ごろから合併症への意識を持ち、体調管理をしっかりおこなって万全の体勢でトレーニングに臨みましょう。

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治療に向けての研究

破壊された脊髄を再生し、再び機能を取り戻すことは全世界の脊損者の願いであり、様々な研究が進められています。

【受傷直後】

米国において、受傷直後、48〜72時間以内であれば、大量にステロイド剤を投与することによって後遺障害を抑える効果があるという報告がなされています。しかし確実性に疑問があり、副作用についても確認がなされていないこと、比較的若年の、再生力の強い患者以外には効果が薄いといわれている事、またこの方法は、日本はもとより米国においても州によっては認可されておらず、未だ一般化していません。
2005年7月には関西医科大学において、やはり受傷直後の患者に対し、自分の骨髄液を培養して脊髄に注入し、幹細胞の増殖を促すという方法の研究を進める計画が報じられました。
研究段階ではあるが2009年7月に米国科学アカデミー紀要に掲載された研究論文によると食品添加物の青色1号の一種であるブリリアントブルーGを脊髄損傷したラットに投与すると回復が見られたとされます。損傷後4時間以内に投与すれば二次障害の炎症を抑えて永久的な麻痺を回避できる可能性があり研究が進められています。

【再生医療】

現在最も有望視されているのが、骨髄や神経の幹細胞を用いた神経再生の試みである。動物実験では部分的な効果が報告されているが、人体に応用し治療に役立つには未だ基礎研究の段階であり、研究の強力な推進が望まれています。主として人工多能性幹細胞(iPS細胞)、胚性幹細胞(ES細胞)の研究されていますが、まだまだ課題も多い状態です。人工多能性幹細胞(iPS細胞)を用いた場合、自分自身の細胞から作って自分自身に使うので拒絶反応は回避できると考えられるものの、臨床医療に利用するとなると、まだやらなければならないことがたくさんあります。また、胚性幹細胞(ES細胞)については、拒絶反応や腫瘍化の問題に加え、受精卵から作られるため倫理面での問題が指摘されています。

2005年現在、唯一臨床治療として行われているのが、中国の北京首都医科大学において、鼻粘膜細胞(OEG)を注入することで脊髄の再生を図るというものです。しかし同大からは長期にわたる治療効果の検証において、世界の研究者を納得させるデータの提出が無く、激しい疼痛やOEGの入手先(中絶胎児から採取)など問題が多数あり、2005年の時点で日本せきずい基金では「現段階で推奨できる治療法ではない」としています。

2011年9月の時点では、ヒトのiPS細胞から作った神経幹細胞移植で脊髄損傷のマウスを治療することに、慶応大学の岡野栄之教授らが成功しました。治療効果は約4カ月後も保たれ、がん化も見られませんでした。移植した神経幹細胞は通常の神経細胞に変化し、マウスの組織とつながるなどしていました。岡野教授は、現在サルを用いた実験を進めており、5年後をめどに臨床研究を始めたいとしています。

いずれにせよ、受傷後時間を経た慢性期の患者については、機械のように「切れたワイヤハーネスを繋ぎ直す」というような簡単なものではなく、「切れたところから再び神経を生やす」ということになるため、仮に神経再生が可能となったとしても、正常な位置に正常な神経が到達できるかは未知数です。

ただ、iPS細胞を移植して成功したとしても、膝・股関節・足首関節などの関節拘縮や筋委縮などがある場合、歩けるとは限りません。J-Workoutに入会していても、そうではなくても関節や筋肉を動かし続ける事がとても重要です。

【運動機能の回復】

現在、失われた運動機能を補助する研究が二方面から行われています。
ひとつは「外骨格」のように体にフレームを取り付け、歩行を可能にしようというものです。埼玉県所沢市の国立障害者リハビリテーションセンターや、藤田保健衛生大学のWPAL(Wearable Power-Assist Locomotor)、サイバーダイン株式会社の装着型自立支援ロボット「ロボットスーツHAL」など各所で研究がおこなわれています。人が身体を動かそうとすると脳から運動ニューロンを経て筋肉に神経電位信号が伝わり、身体は思い通りに動くことになりますが、その際、微弱な生体電位信号が皮膚表面にもれ出てきます。「ロボットスーツHAL」は、この信号を皮膚表面で検出し、コンピューター制御により各部モーターを駆動させて人の動きを支援する装着型ロボットです。

もうひとつは体内に電極を埋め込み、体外に接続されたコントローラーから神経に直接電気刺激を与え、本来の筋肉を動かそうというものです。既にフランスなどで実験された例があります。しかしまだ動きに整合性はなく、また長く使用しているうちに筋肉が発達してくることによりコントローラーのプログラミングを頻繁に調整しなくてはならないなど、脊髄損傷者への完全な実用化への道のりはまだ遠いようです。

J-Workoutでは、再生の促進と身体機能の回復のために機能的電気刺激(FES)を行います。毎回のトレーニングの前か後に必ずFESバイクを使った20分の運動をします。この技術は、足を自発的にほとんどまたはまったく動かせない人が、エルゴメーターと呼ばれる運動バイクのペダルを回転できるようにするものです。コンピューターで発生させた低レベルの電気パルスが電極を介して足の筋肉に伝達され、これによって筋収縮が誘発され、ペダルをこぐ動きを引き起こします。筋肉づくりや心肺機能の改善にFESが効果的であると記した医療文献記事が発表されています。

私たちが行っているトレーニングは慢性期患者においても、脊髄の迂回ルートを形成し、残存神経回路も再教育することで機能回復をしようとしています。FESのような外的刺激を使用はしますが、ロボット工学や体内に電極を埋め込む方法はとらず、自身の回復の可能性を最大限に引き出そうとしています。J-Workout独自のトレーニングで中枢神経を刺激し、運動ニューロンの委縮を防ぎ、神経の再活性化を行います。定期的なトレーニングは脳由来神経栄養因子を増加させ、末梢神経では運動による脳由来神経栄養因子の増加は軸索の再生と結びつきがあるといわれています。

上述にありますように、脳や脊髄といった中枢神経はひとたび損傷を受けると再生しないと考えられてきました。しかし、近年の論文によると脊髄には柔軟性があり、ある程度の学習あるいは適応能力があり、中枢神経も修復・再生する可能性があると言われています。脊髄神経回路には、繰り返しの刺激に対して一種の学習能力があり、また、長期にわたる特定運動が脊髄反射を特異的に変調させることも報告されています。J-Workoutでは積極的に下肢に体重をかけるエクササイズや、歩行パターンを繰り返すエクササイズなど数百を超える全身かつ複雑なエクササイズを繰り返し行う事で、脊髄神経回路に求心性情報を送り、繰り返しの刺激に対して脊髄中枢パターン発生期を活発化させ、歩行などの運動機能の再獲得を目指しています。

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用語集

脊髄損傷

脊髄損傷 せきずいそんしょう、英語:Spinal Cord Injury

何らかの理由により脊柱に強い外力が加えられることにより脊椎がダメージをうけ、脊髄が損傷をうける病態です。外傷性の場合が一番多く、最も多い事故原因は交通事故で全体の約40%を占めています。次いで高所からの転落、転倒とスポーツの順となっています。また、脊髄損傷は内的原因によっても同様の障害が発生します。20−30%は外傷以外によるものであり、後天的性に発生する場合が多く、脊髄の炎症・腫瘍・血管の異常などが原因です。脊髄を含む中枢神経系は一度損傷すると修復や再生はされないと考えられていましたが、霊長類の実験レベルで幹細胞移植による中枢神経の回復が認められています。

脊髄ショック せきずいしょっく、英語:Spinal Shock

重度の脊髄損傷では突然脊髄の全機能が失われ脊髄ショックと呼ばれる状態となります。 損傷部位以下の前感覚や知覚の脱失、運動障害、膀胱直腸障害などのような身体の基本的な機能が失われる時期の事をさします。最初は弛緩性麻痺となり、反射も消失してしまいます。しかし、脊髄ショック期は真の障害像を示しているわけではなく、脊髄は必ずしも完全に損傷しているとは限りません。脊髄ショック期はおよそ24時間から対麻痺では3週間、四肢麻痺では6週間は、個人により差はあるものの神経学的に回復が見られることがあります。しかし、受傷から数週間〜数ヶ月経過して慢性期に入っていくと、次第に受傷部より下方は痙性麻痺に変わり、腱反射も亢進していきます。

脊柱 せきちゅう、英語:Vertebral Column

7個の頸椎(C1~C7)、12個の胸椎(T1〜T12)、5個の腰椎(L1~L5)、1個の仙骨、1個の尾骨からなります。 仙骨は5個の仙椎が融合したもので、尾骨は3〜5個の尾椎が融合したものです。融合した仙椎、尾椎を数えると32〜35個の椎骨となります。

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脳・神経系

神経は体正中部に集合して存在する「中枢神経系」と、中枢外に存在する「末梢神経系」とに分けられます。中枢神経は「脳」と「脊髄」の2つから、そして末梢神経系は、「体性神経系」と「自律神経系」の2つから成り立っています。

中枢神経(系) ちゅうすうしんけいけい、英語:Central Nervous System;CNS

神経系は大きく分けて、中枢神経と末梢神経からなります。中枢神経は多数の神経細胞が集まって大きなまとまりになっている領域で、脊椎動物では脳と脊髄がこれにあたります。脊髄は背側の体腔に位置し、脳は頭蓋腔の中にある。どちらも髄膜に覆われている。また脳は頭蓋骨、脊髄は脊椎骨にも守られている。感覚、運動、意思、情緒、反射、呼吸など、体のあらゆることに関するコントロールタワーの役目をしています。目や耳、手足、体幹、内臓などの末梢神経から情報を受け取り、判断し、指令を出す重要な役割を担っている。

のう、英語:Brain

脊椎動物の頭蓋腔内にある中枢神経の部分であり、神経管の末端が肥大したものです。頭蓋内腔の大部分を占めており、成人で体重の2%ほどにあたる1.2〜1.6キログラムの質量があります。脊髄とともに中枢神経系をなし、感情・思考・生命維持その他神経活動の中心的、指導的な役割を担います。脳は、大脳・小脳・脳幹に大きく分けることができる。大脳はさらに終脳と間脳に、脳幹はさらに中脳・橋・延髄に分けられます。

脊髄 せきずい、英語:Spinal Cord

脊椎動物の脊柱管内にある中枢神経の部分で脊髄神経が出入りします。人差し指程度の太さで、下方は脊髄円錐となって第1〜2腰椎の高さで終わっています。上方は脳(延髄)に連なり、上方から頸部(頸髄)、胸部(胸髄)、腰部(腰髄・仙髄・尾髄)に区分されます。これを髄節と呼びます。第5頸髄から第1胸髄までの髄節は上肢を支配し、第12胸髄から第4仙髄までの髄節は下肢を支配しています。それぞれの髄節の左右の腹側から運動神経根が、背側から感覚神経根が末梢に出ている。腹側神経根と背側神経根はやがて合わさって脊髄神経となります。脊髄は運動、感覚など中枢からの信号を末梢方向に伝える経路、または末梢からの情報信号を中枢方向に伝える経路です。

末梢神経(系) まっしょうしんけいけい、英語:Peripheral Nervous System; PNS

末梢神経系は、体性神経系と自律神経系の2つから成り立っています。1000億本以上の神経細胞からなり、糸のように全身に張り巡らされ、脳と体のその他の部分をつなぎ、また神経同士でもつながっています。末梢神経は、神経線維の束でできていて、直径の大きさにより、さまざまな速度でインパルスを伝えています。

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体性神経系

体性神経(系) たいせいしんけいけい、英語:Somatic Nervous System

体性神経は全身にくまなく行き巡っており、脳神経と脊髄神経のからなります。随意筋または骨格筋と皮膚にある感覚受容器を、脳や脊髄につなぐ役割を果たしています

脳神経 のうしんけい、英語:Cranial Nerve

脳神経は脳幹から出入りしている12対の末梢神経で、頭部・頸部・内臓などに広く分布しており、 運動や知覚などの神経が含まれています。

脊髄神経 せきずいしんけい、英語:Spinal Nerve

頸神経(C1~C8)8対、胸神経(Th1〜Th12)12対、腰神経(L1~L5)5対、仙骨神経(S1~S5)5対、尾骨神経(Coc)1対の計31対からなります。脊髄から発する末梢神経で、各椎体からつ椎間孔を通って左右1対ずつ出ています。それぞれの神経は、2本の脊髄神経根に分かれ、1つは脊髄の前から(腹側神経根、運動神経根)、もう1つは脊髄の後ろから出ています(背側神経根、感覚神経根)。前者は遠心性・運動性の神経線維から、そして後者は遠心性・運動性の神経線維からなります(ベル・マジャンディーの法則)。腹側神経根と背側神経根はやがて合わさって脊髄神経となります。そこからさらに前枝と後枝に分かれており、前枝は求心性と遠心性が混合した繊維で頸部、腕、腰、仙骨で神経叢を作り、後枝は背部の皮膚、固有背筋を支配します。

求心性神経(感覚神経) きゅうしんせいしんけい・かんかくしんけい、英語:Afferent Nerve/Sensory Nerve

神経には2通りの情報の伝わり方があります。1つは、末梢から中枢に伝わる方向です。これを求心性神経(感覚神経)といいます。もう1つは中枢から末梢に伝わる方向です。これを遠心性神経(運動神経)といいます。感覚神経はマ末梢からの感覚に関する情報(体の位置、明るさ、触感、温度、痛み)を脳へ運びます。感覚神経は、それぞれがデルマトーム(皮膚知覚帯)と呼ばれる、体のある特定の領域からの情報を運んでいます

皮膚文節知覚帯(デルマトーム) ひふぶんせつちかくたい、英語:Dermatome

脊髄神経は皮膚感覚を支配しています。各区分を1つの脊髄神経根の感覚神経線維が支配しており、何番の脊髄が皮膚のどこを支配しているのかということを示したものです。皮膚分節は文献などによっても図が異なり、一致した見解はありません。胸髄に関してはほぼ同じだが、上肢・下肢に関しては違いがあることはまれではない。

遠心性神経(運動神経) えんしんせいしんけい・うんどうしんけい、英語:Efferent Nerve/Motor Nerve

運動神経である前側の神経は、脳と脊髄からの指令を体の他の部分に伝道する経路です。特に骨格筋に伝えます。

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自律神経系

自律神経(系) じりつしんけいけい、英語:Autonomic Nervous System

末梢神経系のうち植物性機能を担う神経系です。不随意である自律神経系は随意神経系である体性神経系と対比されます。内臓・血管・分泌腺・平滑筋などに分布しており、循環、呼吸、消化、発汗、体温調節、内分泌機能、生殖機能、代謝、および排泄等のような生命を維持するために必要な機能を無意識のうちに常時調整しています。交感神経と副交感神経の2つからなり、双方がひとつの臓器を支配することも多く(二重支配)、またひとつの臓器に及ぼす両者の作用は一般に拮抗的に働く(相反支配)。

交感神経 こうかんしんけい、英語:Sympathetic nerve

闘争か逃走か(fight or flight)と総称されるような、身体的活動や侵害刺激、恐怖といった広義のストレスが多く緊張・興奮時に優位に働き、運動に適した状態にします。例えば、瞳孔の散大、気管支の拡張、心拍数の増加、血圧の上昇などで、反対に消化器官などの働きは抑制されます。

副交感神経 ふくこうかんしけん、英語:Paraympathetic Nerve

平常時・リラックス時に優位に働き、次の活動に備えさせる働きをします。例えば、唾液分泌の促進、心拍数の減少、血圧の降下、消化液分泌の促進、消火器蠕動の促進などです。

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脊髄損傷の分類

ASIA American Spinal Injury Association

ASIAは、アメリカ脊髄損傷協会の略で、同協会がまとめた脊髄損傷の評価尺度の略語も意味しています。現在、脊髄損傷の神経学的および機能的分類のための国際基準です。運動レベル、感覚レベルの判定を左右別々に行います。感覚検査においては触覚と痛覚の2種類の感覚が必須の感覚評価です。これらが脊髄の違った経路を通って情報が伝達されるためです。仙髄領域の機能が残されているか否かによって「完全損傷」と「不完全損傷」に分類されます。

完全損傷 かんぜんそんしょう、英語:Complete

脊髄が完全に損傷された状態で損傷部位以下の機能が完全に麻痺している状態をいいます。仙髄機能が温存されておらず肛門周囲の知覚や肛門括約筋の収縮が見られない場合をいいます。完全損傷と分類するには肛門の深部圧覚の消失を示す必要があります。完全損傷と決定された場合、ASIAスコア「A=完全」となります。

不完全損傷 ふかんぜんそんしょう、英語:Incomplete

仙髄機能が温存されている状態で、その指標として肛門周囲の知覚の残存、肛門括約筋の収縮のどちらか1つでも認められている状態をいいます。3つに分類されており、 「B=不完全」仙髄の分節S4-S5を含む神経学的レベルより下位、で運動機能は消失し感覚機能は残存。 「C=不完全」神経学的レベルより下位において、運動機能は残存、主要筋群の1/2以上は筋力3未満。 「D =不完全」神経学的レベルより下位において、運動機能は残存、主要筋群の少なくとも1/2は筋力3を有する。

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自律神経機能障害

自律神経過反射 じりつしんけいかはんしゃ、英語:Autonomic Dysreflexia / Hyperreflexia

末梢麻痺域への刺激により自立神経反射が起こった時に、上位からの抑制信号が到達しないため反射が継続する状態をいいます。T6レベル以上の脊髄損傷者のほとんどに見られる合併症であり、生命の危険をともなうこともあります。末梢麻痺域への代表的な刺激は、膀胱の充満あるいは拡張(カテーテルが栓をされている、あるいはねじれていることに起因することが多い) 、宿便、感染(膀胱など)、褥瘡、外傷による苦痛です。症状は頭痛、立毛、高血圧、除脈、損傷レベルより上の発汗、ぼやけた視野、損傷レベルより上の皮膚の潮紅などです。

起立性低血圧 きりつせいていけつあつ、英語:Low Blood Pressure; LBP

頸髄損傷および胸椎の5番以上が損傷している場合、平行している交感神経も損傷を受けています。そのため臥位から座位、立位のように姿勢を変換して血液が下方に移動した際、血管を収縮させたり、心拍、心拍出量を増加させたりして血圧を一定にする機能が低下し血圧が下降してしまいます。また麻痺部の筋ポンプ作用が使えないことや、下肢を中心とした血管収縮が得られなくなり出現します。すると貧血のような状態になり、目の前が真っ白になります。このような状態に陥ってしまった時は、前屈する事や腹部を押してもらうのが有効です。徐々に座位時間・トレーニング時間を増やすことで落ち着いてきます。

体温調節障害 たいおんちょうせつしょうがい、英語:Thermoregulatory Disorder

自律神経障害のため外気温が上昇した場合でも発汗できず体温を十分に分散させることができない状態です。 外気温が高い場合はうつ熱状態になります。

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脊髄損傷後の変化

痙性 けいせい、英語:Spasticity, Uncontrolled Muscle Contraction

脊髄損傷者は下半身、受傷部位によっては手や腕も麻痺しているため、自分の意思で動かすことはできません。 しかし、自分の意思とは関係なく筋肉の反射性収縮が起きることがあります。これを「痙性」といいます。 脊髄の神経細胞は脳との連絡を断たれると、反射が亢進し、徐々に過剰に活性化するようになります。皮膚への接触や刺激、筋肉や膀胱の伸張などの単純なことが引き金となり起こります。脊髄損傷後にみられる筋収縮の代表的なタイプは、ひざとつま先が強直して伸びてしまうもの (伸筋痙縮) と、股関節と膝が曲がるもの(屈筋痙縮)です。

神経性異所性骨化症 しんけいせいいしょせいこつかしょう、英語:Neurogenic Heterotopic Ossification;HO

損傷部位より下位の本来骨形成の起こらない軟部組織に認められる骨形成のことである。この骨は筋肉の間の、特に関節に近い部位に形成されやすい。脊髄損傷のすべての人に起こるわけではなく、どのような理由で特定の人のみに起こるのかも明らかにされていません。

萎縮 いしゅく、英語:Atrophy

使われないことによっておこる筋肉のサイズの減少です。筋肉そのものにその原因のある筋原性のものと、筋肉に指令や栄養を供給している運動ニューロンにその原因のある神経原性、なんらかの原因により長期渡って筋肉を使用しなかったために筋体積が減少し筋の萎縮をきたした廃用性に分けられます。ほとんどの脊髄損傷で、多かれ少なかれ廃用性の筋萎縮がみられます。

拘縮 こうしゅく、英語:Contracture

関節周囲組織や筋肉の硬化で各関節が他動的にも自動的にも可動域制限を起こす状態である。拘縮は、車いすの乗り降りや日常活動の妨げとなります。また、姿勢も変化させ、褥瘡の原因となります。

骨委縮 こついしゅく、英語:Bone Atrophy

骨形成より骨吸収のほうが多い状態をいい、骨量減少とも言われています。脊髄損傷者には麻痺域の荷重制限、筋ポンプ作用の欠如によって起こっていることが多いです。少しの外力によっても骨折することがあるため注意が必要です。

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合併症

尿路感染症 にょうろかんせんしょう、英語:Urinary Tract Infection;UTI

腎臓から尿管、膀胱を通って尿道口にいたる尿路に病原体が生着して起こる感染症のことをいいます。 多くの脊髄損傷者は自力での排尿が困難なため、カテーテル等を使用して導尿を行います。その際に細菌が侵入してしまうのが原因です。尿路感染は脊髄損傷者の2次障害の中でも多く、症状は頻繁な排尿、血尿、尿の色の悪さや臭いのきつさ、下半身のけいせいの増加、熱、寒気などがあります。

褥瘡 じょくそう、英語:Bedsore, Pressure Sore, Pressure Ulcer、ラテン語: Decubitus Ulcer

患者が脊髄損傷などにより長期にわたり同じ体勢で寝たきり等になった場合、体と支持面との接触局所で血行が不良となって、皮膚に壊死を起こすものをいいます。皮膚が赤らむ程度のものもあれば、真皮を突き抜けて脂肪層までえぐれている場合もあります。米国製の尺度(例:NPUAP病期(ステージ)分類)は壊死の深達度のより褥瘡の分類をしています。

深部静脈血栓症 しんぶじょうみゃくけっせんしょう、英語:Deep Vein Thrombosis; DVT

下腿深部静脈の血栓性閉塞により静脈の還流障害、うっ血を来すもので、主な原因は静脈内層の傷害、血液の凝固傾向の亢進、血流速度の低下です。ベッドでの長期間の安静や下半身麻痺などで、ふくらはぎの筋肉が収縮せず、血液が心臓へ送り戻されなくなり血流が遅くなり起こることがあります。血栓症は健康な人でも、長時間のドライブや飛行機旅行などで長時間座ったままでいると起こることがあり、「エコノミークラス症候群」としても注目を集めています。深部静脈血栓症ではわずかな炎症しか起こりません。血栓の周りの炎症が軽いほど、血栓が静脈壁に付着する力は弱く、はがれ落ちて塞栓となり、血流とともに移動して動脈内に入りこみ、血流を詰まらせる可能性が高くなります。また、ふくらはぎの筋肉の作用によって深部静脈に形成された血栓が押し出されることがあります。この血栓が血流に乗って肺へ流れ肺動脈が詰まると、肺塞栓症となります。軽度であれば胸やけや発熱程度で治まりますが、最悪の場合は死亡します。塞栓をきたす血栓が大きい場合は即死をきたすことがあります。DVTは死亡の危険性がとても高い疾患です。

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脊椎脊髄疾患

脊髄腫瘍 せきずいしゅよう、英語:Spinal Hemorrhage

脊髄内に発生した腫瘍や,クモ膜,硬膜,神経鞘,さらに脊柱管内の軟部組織や椎体に発生した腫瘍により,脊髄や神経根が圧迫される病気の総称です。主症状は,腫瘍の種類に関わらず通常は脊髄圧迫症状です。多くは四肢の神経痛や筋力低下,感覚のしびれがみられます。中には,比較的急激に発病して手足が動かなくなったりすることもあります。

脊髄梗塞 せきずいこうそく、英語:Spinal Cord Infraction

脊髄の血管がつまって、その部分の組織が壊死する病態です。脊髄梗塞の場合は、脊髄に直接栄養を与えている動脈の硬化によるものはむしろ少ないとされ、大動脈などの脊髄外の血管に原因のある場合が多いようです。症状は急に起こり、急性期を過ぎると回復傾向となりますが障害の範囲に応じた後遺症を残します。 例えば、両下肢の麻痺(対麻痺)または四肢麻痺、温度と痛みの感覚が損なわれるけれども、触覚、位置覚、振動覚は保たれる解離性知覚障害、膀胱や直腸の障害が急激に現れます。これらの症状の組み合わせを前脊髄動脈症候群といいます。また、脊髄の片側だけが障害され、片側の下肢の運動麻痺と反対側の下肢の温度覚・痛覚、触覚の低下が組み合わさって起こることがあり、これをブラウン・セカール症候群といいます。いずれの場合も、損なわれた脊髄の部位に強い痛みを伴います。

二分脊椎 にぶんせきつい、英語:Spina Bifida

先天的に脊椎骨が形成不全となって一部の椎弓が欠損している神経管閉鎖障害の一つ。そのなかには、脊髄が形成不全を起こし様々な神経の障害を生じる場合があります。 二分脊椎症には2つに大きく分けることができ、神経組織が皮膚に露出している開放性二分脊椎と、神経組織は皮膚に覆われて皮下で神経組織が脂肪などと癒合している潜在性二分脊椎があります。複数の病因の関与が推定されており、環境要因として胎生早期における葉酸欠乏、ビタミンA過剰摂取、抗てんかん薬の服用、遺伝要因として人種、葉酸(ようさん)代謝の多型(遺伝子の型)が知られています。しかし、母親が自分の妊娠に気づくよりも前の段階のころで、両親のコントロールの及ばないところに原因があります。

キアリ奇形 きありきけい、英語:Chiari Malformation

小脳や脳幹部を入れる後頭蓋窩に存在する神経組織が、頭蓋骨から頚椎の中まで落ち込んでいる状態で先天性と後天性があります。キアリ奇形の原因は不明であるが、中枢神経の異常ではなく後頭骨から上部頸椎の骨形成にや、出生時の外傷や妊娠中の薬の影響などの環境要因、遺伝的要因などの説があります。1896年にキアリにより4型に分類されています。その中で2型から4型は神経系の奇形を合併し、ほとんど出生時や乳児期に発症します。そのものの病態よりも奇形により起こる脊髄空洞症が障害を及ぼす事が多いです。

脊髄空洞症 せきずいくうどうしょう、英語:Syringomyelia

脊髄の中に脳脊髄液が貯まり空洞が脊髄を内側から圧迫することによる、脊髄の機能障害のことである。様々な神経症状や全身症状をきたします。次の4つに分類することができます。(1)キアリ奇形に伴う脊髄空洞症、(2)癒着性くも膜炎に伴う脊髄空洞症、(3)脊髄腫瘍に伴う脊髄空洞症、(4)脊髄出血後の脊髄空洞症

水頭症 すいとうしょう、英語:Hydrocephalus

脳脊髄液が頭蓋腔内に通常より多量に貯まり、脳室が正常より大きくなる病気である。大量にたまった脳脊髄液による脳の圧迫が、脳機能に悪影響を与える。おもに乳幼児に多くみられる。二分脊椎などの先天奇形では、脳脊髄液の循環経路のどこかに閉塞(または狭窄)を伴っていることにより起こることが多いです。

背柱側弯 せきちゅうそくわん、英語:Scoliosis

正常な脊柱を横から見ますと、頚椎は前に、胸椎は後に、また、腰椎は前に向かってゆるやかに弯曲しており、生理的弯曲と呼ばれています。正常の脊柱は前あるいは後ろから見れば、ほぼまっすぐです。これに対して側弯症では、脊柱が横に曲がり、多くの場合は脊柱自体のねじれを伴います。側弯が進行すると呼吸障害などの重大な障害がいろいろ生じ内臓にも影響を及ぼします。側弯症のうち、大部分は学童期の後半から思春期に発生します。その多くは、早い時期に発見して治療を受ければ、進行してひどくなるのを止められます。肩の高さが左右で違うなど、自覚症状のある場合もあるが、初期における発見は難しいため、ある程度成長してしまってから気がつく場合が多いです。

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その他の関連用語

導尿 どうにょう、英語:Self-Catheterization

排尿困難の治療に改善が見られない場合や排尿困難に陥った時、自分で膀胱に管を入れて、定期的に残尿を排出することをいいます。一般的にはカテーテルを尿道から挿入し、膀胱内の尿を体外に誘導する尿道カテーテル法のことをいいます。

クオリティ・オブ・ライフ 英語:Quality of Life;QOL

一般に、ひとりひとりの人生の内容の質や社会的にみた生活の質のことを指します。人が充実感や満足感を持って人間らしい日常生活を送っているか、人生に幸福を見出しているか、ということを尺度としてとらえる概念である。QOLの「幸福」とは、身心の健康、良好な人間関係、やりがいのある仕事、快適な住環境、十分な教育、レクリエーション活動、レジャーなど様々な観点から計られる。

日常生活動作 にちじょうせいかつどうさ、英語:Activity of Daily Living; ADL

食事・更衣・移動・排泄・整容・入浴など生活を営む上で不可欠な基本的行動を指します。それぞれの行動の自立度を評価し障害の程度をはかる重要な指標となっています。車椅子の操作、歩行、階段の昇降などの身体運動のみならず、精神活動やコミュニケーション能力も含まれます。

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